アトピー性皮膚炎
現在、アトピー性皮膚炎は免疫の異常、皮膚バリアの異常、かゆみの異常の3つの要素が互いに複雑に絡み合って起こる病気と考えられています(三位一体論)。したがって何々が原因で発症する、というようなわかりやすい病気ではありません。
免疫、皮膚バリア、かゆみを同時にコントロールすることは簡単ではありませんが現在ではいくつかのアイテムを使うことで症状を大幅に改善させることが可能です。
アトピーでは昔からアレルギーの血液検査がよく行われますが、実際にはアレルギー数値(IgE)が大変高値の方もいればほとんど0に近い方もいます。
アレルギー物質は荒れた皮膚から侵入します。アトピーの場合、ずっと皮膚が荒れていますので何らかのアレルギー物質が検査で検出される傾向にあります。
仮にアレルギー数値が高い場合でも皮膚を治療してきれいに保つとアレルギー数値は改善していきます。
これからかわかることは血液アレルギー検査では「これまで皮膚が悪かった」という事実を教えてくれますが、アトピーの詳しい原因までは教えてはくれません。
またアトピーの原因をアレルギーのみに追い求めるのは賢い選択ではありません。
さて、アトピー性皮膚炎の病態の一部は「皮膚バリアの異常」ですが、バリア異常を改善するにはどうすれば良いのでしょうか?
現在のところバリア異常を改善するには適切な薬物療法が欠かせません。
薬物療法には保湿剤やステロイド外用剤、タクロリムス外用剤、デルゴシチニブ外用剤を用います。
近年では副作用を減らしつつ完治に持って行く外用方法として外用プロアクティブ療法が推奨されています。
小児のアトピー性皮膚炎は乳幼児期から積極的に治療することにより重症化を防ぐことができ、さらに完治にもっていくことができやすい傾向にあります。しかし小児の重症例では外用薬以外ほとんど治療選択肢がなく、治療が難渋することも多いです。
成人のアトピー性皮膚炎はストレス、寝不足、疲労、環境要因などが悪化因子となり治りにくい傾向にあります。
これさえやれば改善する、という病気ではないのがアトピー性皮膚炎です。
しかし現在では病態の解明が進み、複数の治療の組み合わせにより多くの重症患者さんを改善に導くことが可能となっています。
当院では標準治療に加え、免疫抑制剤(シクロスポリン)内服、光線療法、デュピクセント注射(※)、JAK阻害薬による重症例治療を数多く行なっています。
※2018年重症アトピー性皮膚炎のための新薬「デュピクセント」(注射剤)が発売されました。中〜重症のアトピー性皮膚炎の方に極めて高い治療効果を発揮します。
※また2020年より関節リウマチの治療薬であったJAK阻害薬がアトピー性皮膚炎に適応となり、更なる治療効果が望めるようになりました。
アトピー性皮膚炎に関するブログはこちら → 当院ブログ「アトピー性皮膚炎」
ステロイド外用剤にまつわるデマについて → 当院ブログ「ステロイド」