治らないアトピー性皮膚炎への対応。デュピクセントとJAK阻害薬まとめ2022
治らないアトピー性皮膚炎への対応。デュピクセントとJAK阻害薬まとめ2022
当院にはたくさんの重症アトピー性皮膚炎患者さんが来院されます。 多くの方は不適切な外用療法の結果悪化しているだけですが、中には外用療法を適切に行ってもほとんど改善しない方がいらっしゃいます。そのグループを重症といいます。 外用療法のみでは十分改善しない場合、当院ではまずシクロスポリン内服を考慮します。シクロスポリンは免疫抑制剤といわれるお薬です。アトピー性皮膚炎では免疫機能が異常に亢進している状態(免疫機能が暴れまくっている状態)ですので、暴れている免疫を抑えてあげる必要があります。外用ステロイドは免疫抑制に働きますが、皮膚の上から塗りますので重症の皮膚炎の場合、病変のある真皮まで炎症を十分に抑えられないことがしばしばあります。 ちなみにアトピー性皮膚炎の痒みは免疫機能が異常に亢進している状態からきていますので通常のかゆみどめである抗ヒスタミン薬はあまり効きません。異常免疫をしっかり抑制するシクロスポリンや後述するデュピクセントあるいはJAK阻害薬が著効いたします。 シクロスポリンは比較的安価でよく効くお薬です。特に痒みへの効果は折り紙付き。当院でもたくさんの方が内服されています。副作用としては免疫抑制しますので感染症に対して弱くなる可能性があるということ。また長期内服では腎障害リスクがあります。めったに見ませんが腎機能が少し低下してくる方もいます。 シクロスポリンでもコントロールできない、あるいはシクロスポリン長期内服による腎障害リスクが懸念される場合、デュピクセント注射を考慮します。 デュピクセント注射は2018年に発売された注射薬です。その効果はすばらしく、高度に苔癬化をおこした50年来の超重症アトピー性皮膚炎ですら見事に軽快します。その成果はこちらのブログでも何度か紹介させていただいています。(デュピクセントの記事はこちらから) 副作用がほとんどなく(目が痒くなるという不思議な副作用あり)採血の必要がないなど、外来での管理が楽でしかも効果が優れているすばらしいお薬です。当院では月に100本ほど投薬・処方しています。 ディピクセントは素晴らしい効果がある反面、高価なのが難点。この注射は基本2週間に1回注射しますが3割負担の方で1回約17000円です(2022年現在)。つまりおよそ1ヶ月で35000円ということです。またこの注射は自己注射も可能です。自己注射の場合、クリニックから最大6本まで処方可能です。6本処方した場合、多くの方は高額療養費制度が使え、さらに自己負担が減ります(およそ1本約13000円から14000円程度まで減少)。 2週間に一度の注射が推奨されますが、経済的な面から月に1本程度打っている患者さんも多くいらっしゃるのが現実です。 効果面からみるとデュピクセントは85点のお薬(私見)。ほとんどの方に対して十分に皮疹を改善させますが、ときに顔面頭部の皮疹だけが改善しない現象があったり(なぜかは不明)、皮疹の一部が治りきらないことがあったりと、ときおり不満に思うことがあるからです。 デュピクセントで効果が不十分の場合、JAK阻害薬内服を考慮します。JAK阻害薬はすでに関節リウマチのお薬として発売されており約10年ほどの歴史があるお薬です。アトピー性皮膚炎に対しては2020年に承認されました。デュピクセントと同じくアトピー発症に関連する有害な免疫機能を抑制し、皮疹を改善する作用があります。デュピクセントが症状発症に関与している免疫の2箇所を抑えるのに対し、JAK阻害薬では6箇所を抑えます。これを聞くだけでもデュピクセントもより効果が高いことがわかるかと思います。僕が85点の効果と言っているデュピクセントに対し、JAK阻害薬は90点から95点のお薬です。 アトピーに使えるJAK阻害薬にはオルミエント、リンヴォック、サイバインコの3つがあります(2022年現在)。 どれも同じJAK阻害薬ですが臨床上やや性格が異なります。 使いやすいのはオルミエント。副作用が少なめといわれています。 しかしオルミエントは副作用が少ない反面、効果がやや優しく時に皮疹が十分にコントロールできないことがあります。 オルミエントは通常4mgで開始します。効果がよければ半量の2mgが使えます。 困ったことにオルミエント内服で効果不十分の場合、増量ができません。 オルミエントが効果不十分の場合や最初からより強い効果が必要と判断した場合にはリンヴォックを使います。 リンヴォックは12歳以上のアトピー性皮膚炎にも使えますので中学生のひどいアトピーにも適応があります。(オルミエントは15歳以上のみです) リンヴォックは15mgから開始でき、効果が十分でない場合は30mgに増量が可能です。ここがオルミエントとは異なる点です。しかし増量できるのは15歳以上の患者さんのみです。 オルミエントとリンヴォックを臨床効果で比較した場合、リンヴォックのほうがより強力と感じることが多いです。 サイバインコはリンヴォック同等の効果と推測されますが長期処方ができなかったこともあり(2022年12月より解除)まだ当院では使用経験がありません。リンヴォックと同様12歳以上でも使用可能です。またリンヴォックとは異なり効果不十分のときの増量は12歳以上でも可能です。 JAK阻害薬はやはり高価なことが難点です。3割負担の場合、28日処方で約44,000円です。60日分以上処方すると多くの方で高額療養費制度が使え、自己負担が減ります。最大90日まで処方可能ですので一度にたくさん処方したほうがより補助分が増え負担が減少します。 JAK阻害薬は高価な薬ですが必ず毎日飲む必要はありません。ひどい時だけ内服して痒みが止まったら休む、ということも可能です。いれたりやめたりが自由なお薬です。 JAK阻害薬はデュピクセントとは異なり、感染症になりやすいという副作用がおきる可能性があります。かぜをひきやすくなったり、帯状疱疹になりやすくなったりすることが報告されています(数%)。また血栓症など重大な副作用も少ないながら報告されています。 JAK阻害薬は投与前に採血やレントゲンを撮影することが義務付けられています(活動性結核等を除外するため)。デュピクセントとは異なり導入までにやや手間や費用がかかることがマイナス点です。 JAK阻害薬は2022年現在アトピー性皮膚炎治療薬としては最高峰にあると考えています。しかし導入が煩雑なことや副作用が起きた時のことを考えると安全性が高く副作用が少ないデュピクセントから開始することが多いのが実情です。 以上、重症アトピー性皮膚炎に対する治療について解説しました。ご参考になさってください(後日加筆修正する可能性があります。ご了承くださいね)。 こちらもどうぞ。 咲くらクリニックインスタ→https://www.instagram.com/anjosakuraclinic/?hl=ja オンラインショップはこちらから→ https://sakuraclinic-online.myshopify.com/
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