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院長ブログ

2022.12.04

紫外線療法

診療室から

新しい光線機器「セラビーム®︎UVA1」 による治療。その成果は今月の学会で発表。

光線療法。

紫外線を患部に当てて皮膚疾患を治療することを指します。

 

光線療法は保険適応になっていて、乾癬、類乾癬、掌蹠膿疱症、菌状息肉腫(症)、悪性リンパ腫、慢性苔癬状粃糠疹、尋常性白斑、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症に適応があります。当院でも月に200件ほど紫外線治療を行っています。

 

ある波長の紫外線を皮膚に当てると、上記の病気のもとになっている皮膚内で悪さをしているT細胞(リンパ球)を減少させることが知られています。

 

光線療法は、1970年代に乾癬に対してUVA(A波紫外線)を使ったPUVA療法が開発されました。

しかしPUVA療法では光を吸収しやすくする薬剤を塗ったり内服したりしてから紫外線を照射しますので大変手間がかかる治療でした。

 

そこでもっと扱いやすい治療が開発されるに至りました。

 

それは現在の主流のひとつ、311nmの波長を用いたナローバンドUVB療法です。乾癬の皮疹に対して311nmから313nmのUVB域の波長が有効性が高いという研究から開発されるに至りました。特にオランダ・フィリップス社が311nmを発振するランプ(TL01)の開発に成功したことから一気に普及することとなりました。TL01は長い蛍光灯のような形をしていますので広い範囲を照射するのに大変適しています。全身あるいは半身に照射が可能です。

↓ このようにナローバンドUBV機器には縦に何本もTLo1(水色部分)が装着されています(シネロンキャンデラ・ダブリン7)

しかし、全身照射では正常皮膚にも紫外線を照射することになるため、紫外線による光老化や長期的には発癌性などが懸念されます。そこで無疹部位への不必要な照射を避けるためターゲット型光線治療器が開発されるようになりました。

 

これがもうひとつの主流、308nmの波長をもったエキシマランプによるエキシマライト療法です。

↓ セラビームミニ(ウシオ電機)

 

エキシマランプの治療器は小型化ができ、持ち運びが容易です。一方で照射面積が小さいため小さい病変に向いていますが大きな病変には不向きです。

 

308nmという波長は治療効果が高いのですが、深達度が低いのが難点です。308nm近辺の紫外線は真皮に約10%程度しか届きません。

 

光線療法が有効な皮膚疾患では病変の主体は表皮ではなく真皮にありますので、真皮への効果を高めると治療効果が高くなることが容易に想像されます。

 

昔のPUVA療法では長波長の紫外線を利用していましたので真皮まで光線が到達します(365nmで真皮に約20%到達)。有効性が高い反面、紅斑反応(赤くなる)など有害な事象も多く発生しました。

 

今月私が学会で発表する、新しく開発された「セラビームUVA1」は365nmの波長をもつ機器です。長波長のため光線はより真皮にまで到達します。昔のPUVAとは異なり365nm近辺の波長のみを発振しますので有害な紅斑反応はほぼありません。また光源はLEDを使用していますのでたいへんコンパクトです。

新開発のセラビームUVA1は、PUVA療法で既に証明されているUVAの有効性を保ちつつ、近年のLED技術の発達により小型化され扱いやすくなって新たに誕生した機械です。この機械を使うことで難治性皮膚病変に対してさらにアプローチできるようになりました。

 

実際308nmのエキシマレーザー(XTRAC)でも発毛しなかった円形脱毛症に対し、セラビームUVA1を照射したら発毛したという症例も経験しました。

 

セラビームUVA1による成果は今月の学会で発表いたします。どうぞご期待ください。

 

 

 

 

 

 

 

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