院長ブログ
2022.11.19
診療室から
肝斑治療のいろいろ。肝斑治療をまとめてみました。
肝斑とは、
主に30代後半以降の女性に現れる(たまに男性もある)左右対象に面をなすシミのこと。頬や目の周囲によく出ます。場合により口の周囲や額にも出ます。しかし目のすぐ下(下まぶた)は不思議と出ません。
肝斑は女性ホルモンや日光、手による摩擦などの刺激により発生するとされています。
特に女性ホルモンの関与が大きいとされており、ホルモン剤の内服でも発生することが知られています。
通常肝斑は中年で発生し、年齢が進むにつれて消えてきます。60代後半以降の女性ではほとんどありません。
すなわち40歳前後で発生し、60代前半ごろまで続く場合が多いです。
年齢を経過する以外、肝斑を完全に治す方法はなく、治療では色をある程度落ち着かせることのみができます。
治療はまず保存的といって、なるべく刺激を与えない治療法が第一選択です。
一般的にはトラネキサム酸の内服とハイドロキノン軟膏やトラネキサム酸軟膏の外用が推奨されます。
トラネキサム酸はビタミンCやビタミンEと組み合わせて処方されることが多いです。
以上の内服外用で改善する確率は約60%です。中にはまったく効かない方がいらっしゃいますのでさらにいくつかの方法を試します。
外用療法としてはまずレチノイン、ハイドロキノン軟膏の組み合わせを試すことが多いです。
レチノインはメラニン色素の排出を早める働きがあり、肝斑部分にたまったメラニンを排出させる作用があります。ハイドロキノンはメラニンを作りにくくする作用がありますのでレチノインと共に使われることが多いです。
有効な治療のひとつですが、レチノインが強い皮膚炎を惹起することがあり、使用上で炎症を強くおこしてしまいますと肝斑が余計に悪化することもあるため、処方された医療機関よりよく指導をうけて使用することが大切です。
最近ではシスペラという外用剤が海外からの輸入で販売されており、肝斑への高い有効性が確認されています。当院スタッフで10年来の難治性肝斑のものがおりますが、いろいろな肝斑治療が無効であったのにシスペラの2ヶ月外用ですっかり改善した例もあります。値段が3万円以上と高価なことがネックです。
機械を使った治療ではレーザートーニングというものがあります。
これはQスイッチレーザーやピコレーザーを使った手技です。もともと韓国で行われていた手技が日本で広まったものです。使用される波長はさまざまですが主に1064nmの波長で行われることが多いです。簡単にいうとレーザーをごく弱く当て、メラニンをわずかに破壊し、排出を促すというものです。有効性が高く、多くの施設で行われています。一方でレーザートーニングでは色素脱失という副作用が知られています。レーザーを当てすぎるとメラニンが排出されるどころがメラニンが消失してしまい、半永久的な白斑を残してしまうのです。このためトーニングは危険、と訴えている医師もいます。トーニング処置では毎回写真を確認し、白斑の発生がないかどうか確認しながら行うことが重要です。
最近ではニードルRFというカテゴリーの機械が肝斑に有効性が高いと評価が高まっています。具体的には「シルファーム」というマシンです。ニードルRFは皮膚に微小な針を刺し(塗る麻酔がいります)、皮膚内に通電して真皮に熱作用を加えることで真皮上層から表皮基底層を回復させ、結果メラニン色素を作りにくくさせるという治療です。シミの発生においては真皮の異常がメラニンを異常に産出させることがわかっていますが、ニードルRFではおかしくなった真皮部分を正し、色素斑を改善させる、という治療です。レーザーがメラニンに吸収されることで治療効果を発揮することに対し、メラニンの多少に関係なく治療が可能なのがニードルRFです。つまりレーザー治療ではメラニンが減ってくると効果が薄まってくるのですがニードルRFではメラニンが薄くなってきても効果があります。日本では昨年度より導入が進んでいる最新治療器です。
以上肝斑治療について総括しました。肝斑でお悩みの方はぜひご相談くださいませ。(2022年度現在)
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