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院長ブログ

2022.07.31

JAK阻害薬

アトピー性皮膚炎

中学生のひどいアトピー性皮膚炎は治せます。

JAK阻害薬。まだ馴染みの少ないお薬ですが、日本では関節リウマチの治療薬として以前から発売されているお薬です。内服薬。

 

このJAK阻害薬は2020年より中等症以上のアトピー性皮膚炎治療薬として追加承認されています。現在3種類のJAK阻害薬が発売されていますが、このうちの2つは小児(12歳以上)のアトピー性皮膚炎治療薬として2021年から承認を受けています。

 

私たちが日常診療で一番困っているのは「小児の重症アトピー性皮膚炎」です。重症とは、ある一定以上の強さの塗り薬をしっかり塗っていても皮疹が改善しない人たちのことです。

 

アトピーの重症例では塗り薬をどんなに塗っても皮疹はきっちり消えませんし、痒みも止まりまません。痒み止めのお薬があるじゃないかって?いいえ。そこらで出される痒み止めの内服はアトピーにはほとんど効きません。(アトピーには抗ヒスタミン薬はほぼ効果がありません。アトピーの痒みにはヒスタミンがほとんど関与していないからです。アトピーの痒みには免疫が大きく関与しています。)

 

では何がアトピーの痒みに効くかというと、免疫を調整するお薬がアトピーの痒みによく効きます。現在日本で手に入る免疫を調整するお薬はシクロスポリン(免疫抑制剤)、デュピルマブ注射、JAK阻害薬です。ステロイド内服も免疫を調整する作用がありますが、一般的に長期内服は推奨されません。

 

シクロスポリンは副作用の面から小児には少々使いづらい。デュピルマブは現在15歳以上にのみ適応です。今のところ唯一JAK阻害薬が小児(12歳から)で使えるお薬ということになります。

 

12歳以上というと、つまり中学生です。中学生になると勉強もしなければなりませんし、見た目も気になる年頃です。また反抗期を迎えたりと精神的にも色々と不安定な時期です。このような時期に痒みや皮疹がひどい重症の状態で過ごすというのは心の発達や進学などの面で非常に問題があります。

 

どんなに薬を処方しても治らない重症の中学生の子たちはこちらのことをとてもシビアに評価してくれます。重症の子たちは普通の塗り薬を塗っても全然治らないわけですからまず僕らを信用してくれません。目もあわせてくれません。

と、このように昨年までは重症アトピーの中学生には本当に手を焼いていました。

 

ところが昨年の秋、JAK阻害薬が12歳以上に適応になりました。これは大ニュースだ、とさっそくうちに通っている重症アトピーの中学生数名に声をかけて治療を開始しました。顔が皮膚炎で真っ赤だった女の子、痒みで満足に寝れない男の子、皮膚炎で全身が常にボロボロの男の子。僕の外来の最重症の子達にJAK阻害薬を投与した途端、どんどん改善していきます。たった2週間でみんなツルツルの綺麗な肌になっていくのです。2018年のデュピルマブ登場以来の衝撃です。

 

これでやっと重症の中学生の子を救うことができるようになった、と心から安堵しました。

 

JAK阻害薬は色々な副作用に気をつけなければならないお薬ですが、実際に使って見ると懸念される副作用は今まで経験したことはなく、実臨床に於ける安全性は比較的高いように思います。(もちろん副作用はある一定の確率で起こることがあります)

 

一方で費用面が気になりますが、中学生の間は愛知県では医療費が無料です。とてもありがたいことです。しかし中学を卒業して3割負担になった途端、28日分投与で約44,000円の負担となります。(名古屋市では高校生卒業まで医療費無料だそうです)

 

塗り薬をどんなに塗ってもこれ以上の改善が得られないひどいアトピー性皮膚炎でも12歳以上であれば今ではとても綺麗に治すことができるのだ、ということを知っていただければ幸いです。

 

また来年以降ですが6歳以上で使える中等症〜重症のアトピー性皮膚炎用の治療薬が承認されるということも観測されています。

 

ステロイドの塗り薬とステロイドの内服以外ろくな治療法がなく、それでも外来で戦っていたあの時代から考えるとアトピー性皮膚炎治療はここまできたのかと感慨深いです。アトピー性皮膚炎治療の未来はとても明るいです。あとは費用面さえクリアできたらもっとありがたいのですがね。

 

医学の進歩に感謝しつつ外来診療を行う毎日です。

また明日からも頑張ります。

 

 

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