今日も咲くらで

院長ブログ

2022.03.30

アレルギー

診療室から

赤ちゃんの湿疹はしっかり治す。決して放置してはいけない理由。

咲くらクリニックには毎日湿疹の赤ちゃんがたくさんやってきます。

全くの初診だったり他でよくならなくてやってきたり。

毎日のように外来でお話させていただいていることですが、「赤ちゃんの湿疹は決して放置してはいけない」です。

なぜなら赤ちゃんの湿疹を放置すると次はアレルギーを起こしてくるからです。

 

湿疹を食物アレルギーの結果だと考えている医師がまだいますが、現在の考え方では「湿疹は食物アレルギーの結果ではなく、アレルギー獲得のきっかけになるもの」です。

 

その昔はアレルギーは経口感作により成立する(食べさせると発症する)と考えられていて徹底的な除去が推奨されていましたが、2008年イギリスの小児科医から提唱された「二重抗原曝露仮説」により食物アレルギーの考え方は180度変わりました。もう14年も前の話です。

 

二重抗原曝露仮説とは、食物アレルギーにおいてはアレルギー物質は皮膚から侵入してアレルギーとして認識されるが、経口摂取すると寛容(アレルギーを発症しない)に働く、という考え方です。

ピーナッツオイルをスキンケアで使用していた乳児にピーナッツアレルギーが多く発症していたことや、早めにピーナッツを摂取いていたグループではピーナッツアレルギーを発症しにくかったという調査結果からこの二重抗原曝露仮説が提唱されたのでした。

 

食べさせればアレルギーを起こさなくなって、皮膚に付いたものがアレルギーを起こす??

当時はなかなかすぐには信用しにくい説だったのですが、その後に日本で起きた大事件でその説は強く信じられるようになりました。

 

2011年に起きた「茶のしずく石鹸事件」

悠香が販売する「茶のしずく石鹸」に泡立てをよくする目的で含まれていた小麦タンパクが原因で、石鹸を使用していた客が小麦タンパクの経皮感作により次々と小麦粉アレルギーを発症した、という事件。被害者は2000人以上に上りました。当時私の外来に相談に訪れた方は20名以上もおられました。

 

医師たちによるさまざまな調査を経てわかったことは、石鹸に含まれる小麦タンパクを毎日「荒れた皮膚に」擦りつけていたことで皮膚からアレルギーを獲得してしまい、その結果小麦の経口接種でもアレルギー症状が起きるようになったというものです。

 

つまり日本で起きた大事件で「二重抗原曝露仮説」は仮説ではなくなったのです。

 

それ以来、私は赤ちゃんの湿疹を放置することはアレルギー発症の元である、という話をさせていただいています。

 

湿疹の状態とは皮膚のバリアが壊れてしまっていて常に何らかの物質を通してしまっている状態です。

湿疹を放置すればアレルギー物質は容易に皮膚を透過し、体内に侵入し、アレルギーとして認識されます。

湿疹をたった1−2ヶ月程度放置するだけでアレルギーを獲得してしまうこともわかっています。

 

ですから赤ちゃんの湿疹は気づいた時点ですぐに治療を開始し、厳しいコントロールを行なって治療すべきです。

さもないと将来アレルギーを発症する確率が高くなってしまします。

湿疹を治療をしていなくて気づいた時にはアレルギーだった、ということがないようにしたいものです。

 

湿疹とは肌がざらざらとしている状態。ざらざらは乾燥ではありません。これを間違っている医師や患者さんはかなりいます。

赤ちゃんの湿疹の治療で安全な治療薬は現在のところステロイド外用薬だけです。保湿では治りません。

 

また令和になっても変なうわさを耳にしただけで理由もなくステロイドを忌避する方が存在しますが、ステロイドを忌避してしまっては湿疹は決して治らず、赤ちゃんがアレルギーを発症するまで一直線です。独りよがりな知識で赤ちゃんを病気にするのはやめましょう。

 

赤ちゃんの湿疹はしっかり治す。決して放置してはいけない理由、お分かりになりましたでしょうか。

気になることがありましたら外来までご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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