今日も咲くらで

院長ブログ

2022.03.20

JAK阻害薬

アトピー性皮膚炎

アトピーの最新治療。

土曜日の午後は珍しく休診とさせていただきました。

目的はアトピー性皮膚炎の最新治療薬「JAK阻害薬・オルミエント」についてのセミナーに参加するためです。

本当は京都で集まりがあったのですが、マンボウのおかげでオンライン開催となりました。京都行きたかったな。

ま、それはいいとして、

 

JAK阻害薬とは何か。

難しいことは書きません。ここは患者様向けですので。

4年ほど前、重症アトピー性皮膚炎の治療薬デュピルマブ(商品名デュピクセント)が発売されました。さっそく使ってみるとまさしく劇的というほど効きました。50年間ボロボロの重症アトピーだった患者さんがたった半年でツルツルの肌を取り戻したのを見たときは涙が出るほど嬉しかったことを思い出します。

そのデュピクセントですが、大変よく効くお薬なのですが、100点のお薬ではありません。ここのブログで何度か書いていますが、デュピクセントは85点の薬、と表現しています。

安全性が高くて素晴らしくよく効きますので100点と言いたいところなのですが、人によりやや効果が弱く感じられることや、顔面頭部の症状が改善しにくいことが85点の理由です。また作用機序から考えましてもアトピーの原因となる物質を完璧には止めていないので85点までの効果かと思います。

しかしデュピクセントでは気をつけるべき重大な副作用がほぼないことを考えると開業医における重症アトピー性皮膚炎治療には最高のパートナーと言えます。

さて一昨年、重症アトピー性皮膚炎治療に新薬が投入されました。それが「JAK阻害薬」。元々は関節リウマチの治療で使っていたお薬ですが、アトピーにも大変効果が高いとして新しく重症アトピー性皮膚炎にも適応が拡大されました。

JAK阻害薬は超簡単に書きますと、かゆみや炎症を発生させるサイトカインという物質の伝達経路であるJAK/stat 経路をブロックすることでアトピーの症状発現を抑えます。(難しくてすみません)

JAK阻害薬は炎症や痒みをおこす経路を「幅広く」ブロックする作用がありまして、結果デュピクセントよりも多くの作用を発揮します。つまり作用機序から考えるとデュピクセントよりよく効くことになります。実際に投与してみるとその効果発現の速さに驚かされます。(デュピクセントが数週間かかるところ、JAK阻害薬では数日)

デュピクセントが85点のお薬ならJAK阻害薬は90点から95点のお薬、と評価できるかと思います。

炎症や痒みを起こす経路を幅広くブロックするということは免疫作用を幅広くブロックする、という意味でもあります。細菌やウイルスと戦う免疫反応も少しブロックしてしまいますのでやや感染症にかかりやすくなるというマイナス面もあります(ただし数%です)

JAK阻害薬は内服薬です。デュピクセントが注射であることに比べると使いやすいのは間違いありません。

価格面はデュピクセントとJAK阻害薬の臨床効果が似ていることからひと月あたりの負担額はデュピクセントと比べてあまり変わりません。JAK阻害薬を4週間分処方すると(容量によっても変化しますが)3割負担で約44,000円です。

JAK阻害薬は必ず毎日服用しなければならない、ということはありません。ひどい時だけ内服して、改善したらやめる、ということも可能です。

外来でよく聞かれることですがJAK阻害薬はステロイドの類いではありません。

JAK阻害薬は現在、今回のセミナーで取り上げられたオルミエントのほか、数種類が発売されています。当院では15歳以上の成人にはオルミエント、12歳から15歳くらいまでの方にはリンヴォックというJAK阻害薬を投与しています。(オルミエントには15歳未満の小児には適応がありません)

いずれもデュピクセントよりも臨床効果が高く、これから重症アトピー性皮膚炎治療の潮流が変わるものと思っています。

残るは小児の重症例への対応。これが早く出てくれると本当に治療がやりやすくなると考えています。小児の重症例を作らないことが成人の重症例を作らないことに直結しますから。こちらは早ければ来年くらいに発売ではないかと噂されております。

 

アトピーが克服できる、明るい未来は間違いなくもうすぐそこまで来ています。

重症アトピー性皮膚炎で苦しんでいる方がいらっしゃったらいつでもご相談くださいませ。

 

 

 

 

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