院長ブログ
2021.10.08
アトピー性皮膚炎
デュピクセント
小児・重症アトピー性皮膚炎治療の問題点
僕は毎日重症のアトピー性皮膚炎をたくさん診察しています。その中で思うことを少し。
アトピー性皮膚炎(AD)の治療は、10年ちょっと前まではステロイド外用薬と抗ヒスタミン薬の内服が中心でした。
その昔、特に重症AD治療においては今の知見を元にいえば重症ADが外用薬ごときで治るはずもなく、痒み止めと称される抗ヒスタミン薬に至っては気休め程度の効果しかなかったと思われます。
以前の重症AD治療では痒みや皮疹が治らないからといって躍起になって外用ステロイドを強くしていったわけですが、強くしていくと皮膚への副作用は無視できず、皮膚は萎縮し薄くなり、赤みも出て、さらには毛包炎やニキビも起こしてどんどんおかしくなり、しかも痒みはぜんぜん止まっていないという状況に陥りがちでした。
当時の重症ADの患者さん達は外用剤の副作用の塊みたいな状況になりながらも治らないわけですから、結局アトピーは医者では治らないと諦めて非医療や脱ステロイドにすがるということも事実少なくなかったのだろうと想像します。重症の患者さんはそれこそ藁をもすがる思いであったのです。
これらの事象は当時の医学では重症AD治療に限界があったからであります。
重症AD治療に転機が訪れたのは2008年。重症AD治療に対し免疫抑制剤のシクロスポリン内服が承認され、重症ADには大変よい治療効果が得られました。そこそこ安くてよく効くものですから承認以来、当院でもたくさん使用しています。
もっとも衝撃的だったのは2018年に承認されたデュピルマブ注射(デュピクセント®︎)の登場でしょうか。
ゴリゴリの痒疹が全身に多発している、50年来治らなかった超重症ADが2週間に1度の注射だけでいとも簡単にすべすべの皮膚に戻ってしまうさまをみて涙が出るほど嬉しかったことを思い出します。また嬉しいと同時に今まで僕たちは何をやっていたんだろうか?と少しむなしい気持ちにもなったことを覚えています。
さらに昨年にはJAK阻害薬というジャンルの内服薬(オルミエント®︎)が重症AD治療に承認され、重症ADの治療はさらに取り組みやすくなったと思います。
これまでの話は15歳以上のいわゆる成人の重症AD治療の話です。
今や成人の重症AD治療においては、高額な治療費がかかりますがお金さえ出せばほぼ全員が劇的に改善する、という世界になりました。これは大変素晴らしいことです。
ところが現場におりますと、まだ行き届いていないところがあります。
それは小児重症ADの治療です。
小児でもある一定の割合で重症ADが存在します。しかし成人に比べるとその数はずっと少ないです。
小児の重症ADの治療ではいまだステロイド外用剤が中心です。内服に至っては抗ヒスタミン薬しかほぼ選択肢がありません。
現在のところ安全な治療がその2つしかないからです。ですから小児の重症例は大変治りにくいです。
上述したように外用ステロイドは強くすれば局所への副作用が無視できませんし、抗ヒスタミン薬はADに対しては気休め程度の効果しかありません。
小児の重症ADの治療には成人のように安全で有効な内服薬や注射薬がいまだ存在しないのです。
成人の重症ADの方のほとんどは幼少期から続いている方です。
幼少期のAD治療の成否が将来重症ADになるかどうかを決める大きな要素だと僕は考えています。つまり幼少時の重症ADをコントロールできれば成人の重症ADは減少するはずです。
しかしながら幼少期の重症例を上手に治す手段が今のところないのが現状です。
まだ日本では承認されていませんが、アメリカでは2020年から上述のデュピルマブ(デュピクセント)が6歳から使えるようになりました。
もちろん素晴らしい成果を上げているのは想像に難くありません。
小児へのデュピクセント投与が日本でも承認されれば小児重症ADの治療は格段に進み、結果成人の重症患者は激減するはずです。
ごく最近の話題ですが、12歳以上の重症ADに対してリンヴォックという内服薬が承認されました。これはオルミエントと同じJAK阻害薬というジャンルのお薬です。
これまでのデュピクセントやオルミエントが15歳以上しか使えないお薬だったことを考えますと対象年齢が3歳若返ったことは大きな進歩です。
これは簡単にいうと中学生の重症ADが救えるようになったこと。
中学生は多感な時期で心身ともに変化が大きく、勉強もたくさんしなければいけない時期です。
この時期にAD特有の強い痒みが抑えられ、外見がとても綺麗になる治療法があるということは彼らの将来・人生にとって大きな福音となることと思います。
現在当院でも適応がある患者さんに投与するべく早急に準備を進めています。
これまで有効な治療法がほぼなかった小児重症AD治療ですが、デュピクセントの小児への適応追加を僕は心待ちにしています。
デュピクセントが小児に投与ができるようになると子供が全身激しい痒みで毎日あちこちを掻いている姿を見なくて済むようになるのだろうと思います。
また親が塗り薬を全身に塗りたくる手間もほぼ無くなるのだろうと思います。
現在当院の外来を受診している小児重症ADの子達にも数年後に確実に訪れるであろう大きな変化を期待をもって伝えています。
それまではじっと耐えてステロイド外用が中心の現在の治療を粘り強くやっていこうと思います。
お母さん達も決して諦めずに今の治療を頑張ってほしいと思います。
治らないからといってへんちくりんな根拠不明の治療には決して手を出さないように。
塗り薬もほとんどいらなくなるような綺麗な肌が得られるその日まで一緒に戦いたいと思います。
これから訪れる未来はきっと明るいです。あと少しの辛抱。
今日も頑張りましょう。
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